EC売り上げ改善物語

EC再生請負人Vol.3~登山と下山の論理~

売り上げ計画を立てた先輩。
私にこう言いました。

売り上げ計画を立てた。立てたと言っても、半年後の12月に月商500万、その1年後の12月に1000万という大きなマイルストーンを作ってそれに合わせて無理のない売り上げ増加計画を作った感じだよな。
今100万だとしたら、来月200万、再来月300万みたいな感じで増やしていけば500っていうざっくりしたもんだ。
今100万の店舗が来月200万になるかね?

と。
その通り。そんなうまくいくわけがない。

ただ、それに近い単月ごとの計画は必要ではある。
そのためにはモールの特徴をとらえる必要がある。

いまは、日本最大手ECモールの楽天市場での計画だ。

楽天市場のイベントルーティンを理解する

まず大切なことの一つが、楽天市場が公式に主催するイベントだ。
このイベントは、各店舗の売り上げに直結する重要なものになるのでまずはこれを理解する必要がある。

楽天のイベント

  • スーパーSALE(セールと買い回りイベント)
  • お買い物マラソン(買い回りイベント)
  • 単日イベント(5・10の日イベント、スポーツチーム勝利イベント、1日限定イベントなど)

基本的には大別するとこの3種。

スーパーSALEは四半期に1回の大イベント

スーパーSALEはセールサーチという規定に沿った割引措置を行っている商品を探せるイベント時にのみ発生する検索エンジンイベント。
このサーチシステムに登録するためには一定のルールに従って割引を行っている商品であれば掲載自身は無料で行える。
当然割引を必要とするため利益率は下がるが、このサーチに掲載することでアクセスを飛躍的に伸ばすことができる。
楽天市場で無償でアクセスを増やすことができるものがあるとした場合、セールサーチのみだと考えられる。
したがって、このスーパーSALE、セールサーチは楽天市場内においては最大のイベントであり、効率よく利用することで売り上げを大幅に伸ばすチャンスのイベントである。

買い回りイベントは定期開催

楽天市場の場合、そのほとんどの日は、買い回りイベント対象となる。
理由は簡単で、一定期間という定めの元で、複数店舗(最大10店舗)で買い物をした場合に、楽天市場自身がポイントを付与するというイベントだ。
期間を区切らないと成立しないイベントのため、大体1週間程度の期間で、月に2回程度開催されることが多い。
スーパーSALEの期間は割引イベント以外にこの買い回りイベントも同時開催されるが、スーパーSALEイベントではない時は買い回りイベントのみのお買い物マラソンというタイトルのイベントになっていることが多い。
ほとんどの場合月2回程度開催されるため、月の半分以上は買い回りイベントで埋まるのだ。

こちらは、高額商品ほど、買い回りイベント期間中に売れる傾向にある。
なぜなら、10店舗買い回ればイベントのポイントで10倍、また、楽天会員のSPUというイベントでもともとのポイント還元率が2~20倍程度になっているユーザが結構いること、さらに店舗付与ポイントが加算され、多い人になれば50%程度の還元率になる可能性がある。
そういう方にしたら、高額の商品を約半額で買うのと同義になるので買うならそのタイミングでとなる。
いかにうまく自店舗のポイントを付けることで決済まで行ってもらうかというのが勝負になるイベントだ。

単日イベントは他イベントと被ったときが熱い

特に熱くなるのは、スーパーSALE2日目が大体が●月5日となるのだが、5と0の日は楽天カードユーザがポイント加算される日なのだ。
さらに、プロ野球のイーグルス、Jリーグのビッセル神戸が勝利した翌日は、更にポイント加算となる。
セールや買い回りイベントの5と0の日(大体5日と10日がイベント中にある)でなおかつプロスポーツ団体が勝利した日はかなり熱くなる。
10日の方だと、最終日前日(大体11日のAM2時でイベント終了となることが多い)ということで、更に楽天がポイント2倍加算イベントをやったりするのでその日を狙って買い物をするというユーザも多いのだ。

イベントを知って登山と下山の理論を知る

上記のようなイベントが発生することはわかっているので、それに合わせて売り上げ計画を立てる。
私が最初にアドバイスした12月。この12月というのは楽天市場においては最も売り上げが上がるつきなのだ。
スーパーSALEの開催もさることながら、買い回りイベントでは一番売り上げが上がると言われている年末の大感謝祭があり、更には年末ということで年末年始を過ごすためのありとあらゆる商品が売れるタイミングでもある。
また、先輩の会社には、陶器でできた鏡餅があり、入り口商材もある。
スーパーSALEから大感謝祭の大きな波に乗ることができれば最大の売り上げを作れるだろうと考えていた。

ここで、先輩には登山と下山の理論を教える。

売上は登山と同じだと考えてくださいね。
例えば初めての登山をする人に、エベレストを登れと言っても難しいでしょう。
今はそんな感じだと思ってください。
初心者の方であれば、まずは標高が低い高尾山を登りましょう。
じゃあ次は富山県の立山に登りましょう。みたいな感じで徐々に標高を上げますよね?
それと同じです。
そして、登山して頂上まで昇ると次は下山ですよね。
これもわかると思うのですが、標高の低い山だと下りるのも簡単ですが、標高の高い山に登れば下山するのにも時間がかかりますよね。
ECの売り上げってこれと同じなんですよ。

ようは、いきなり富士山のような高い山(売り上げ)には登りたくても、体力がついていかないとか経験値がないために無駄な動きをしてしまうとかいろんな理由があって簡単に登山できません。
だから、下山もできなくて滑落しちゃうかもしれないわけだ。

少しずつ標高を上げていき、最終的には富士山やエベレストといった高い山に登るというイメージだ。
今年の12月は富士山で、来年の12月はエベレストといったところか。

高い山に登れば当然下山する必要があるが、登った山が高ければ高いほど下山するのにも時間がかかる。
ということは、次の登山までに降りきらなければ、標高が高い位置からまた登山することができる。

売上はよくなれば必ず反動で落ち込むタイミングも来るのだ。
この落ち込んだときにその前より高い位置をボトムとすることができれば次の山が来る時にはある程度高い位置から登山できるというのが私の論理だ。

楽天市場の場合、一般的な運営であればスーパーSALEを頂点として登山し、スーパーSALEの翌月は下山の月となる。四半期に1回なら、下山の月が2カ月あるが、この2か月は、スーパーSALE月の前月、前々月より落ち込まないようにする必要があるということだ。
そうなるよう、何をどう仕掛けていくかというのが重要だが、これを考えれば100万円の月商を半年後に500万円にするのは難しくないはずだと考えている。

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