民間企業の平均給与が減少したとのことです。
平均値の怖さ
平均給与額が436万円ということで7年ぶりに減少に転じたとのことです。
民間給与、7年ぶり減少 平均436万円、19年分 国税庁ーYahooニュース
新型コロナウィルスの影響が実際の収入にも影響してきたのでしょう。これはこれで正しいと思います。
が、気にしていることはこの平均というものなのです。
例えば、年収900万の人が1人と、年収100万円の人が1人いた場合、平均給与は500万円ということになります。
しかし、実際500万円の収入の人というのはこの2人には存在しません。
900万の人にしたら、『えっ?世の中みんなそんなに稼いでいないんだなぁ』と思うでしょう。
100万の人は、『えっ?まじで?俺平均の1/5じゃん』と思ったはずです。
もちろん国税庁が発表しているものは分母(データに入っている所得者の数)も膨大なのでそんな落差にはならないと思いますが、しかし、給与所得者と言っても、数千万円の給与所得者から、本当に年収100万円台の方もいるはずです。
それらの平均値というのは今回のように景気や国内の情勢を図る指針にはなれ、自分の所得が世の中の大多数と比べたときに多いのか少ないのかの水準にはならないのです。
中央値はないの?
平均値は国内の経済・景気の状態を把握するのに向いていますが、個々の所得が全体より上なのか下なのかを測るバロメーターとしては向いていません。
向いているのは中央値だと思います。
中央値とは、簡単に説明すると、高低がある数字の中で真ん中に位置する数字です。
収入の『普通』といわれる数字を見るのは平均ではなくやはり中央値です。
中央値は端的に説明すれば真ん中、高額年収から低額年収までを順に並べた真ん中の数字なので、より実態に近くなると言われています。
中央値が年収においては『普通』であり、『一般』の方の年収額となります。
国税庁や政府が発表するものは基本的に平均年収ですから、その発表を見た平均年収より100万円程度少ない方(実際は中央値に近い方)や、100万円程度多い方(実際は中央値から200万円近く多く貰っている方)はこう感じるのです。
【それなりにもらってるつもりだったけど思ったより少ないんだな。】
とか、【結構頑張ってるつもりだったけど、平均よりちょっといいくらいなんだ】とか。ちょっと実体とずれた感想になります。
実はその感覚は間違っていないんですね。
中央値で見ると平均値より80~100万ほど安いのが中央値ですから、平均値より100万程度少ない方は、『おれ、普通くらいだと思ってたけど、世の中みんなけっこうもらってるんだな』と感じるでしょうし、100万程度多い方は『おれ、結構収入はいいと思ったけど平均値から見たらそうでもないんだな。。。』と感じたはずです。
これを中央値で見たら、平均値より100万程度少ない要は年収330万程度の方は『ああ。俺は真ん中よりちょっと少ない程度か。ほぼ真ん中って感じなんだな』と思うでしょう。逆に100程度万多い、500万程度の収入の方は『やっぱ俺真ん中よりちょっと良いくらいの収入なんだな。』と平均値で抱いた感想と全く感じ方が違いますよね。
そして、おそらくそのほとんどがそうなのですが、公務員、地方公務員も国家公務員もですが年収の平均で公務員の収入が決められていますから、民間よりわずかに収入が良く感じるのもそのためです。平均値だと言いながらどう見ても周りの人たちより少し多めに貰っている感覚がありませんか?それは日本国給与収入の平均値で見て給与が決まっているからです。
平均の穴
実体の『普通・一般』を映すのには中央値の方がたけているのはわかりました。
では平均っていったい何なのか?平均値に潜む穴とは何なのか?を解説します。
平均は総和を慣らした数字
平均値というのはすべての数の合計をサンプル数で割ったものです。
多く収入がある人、少ない収入の人すべてを慣らすといくらくらいの収入になるのかという数値です。
なので、最初に示したように900万の人と100万の人2人の平均は500万となり、実際に500万円という収入の人がいないのにそういう数字が出ます。
2人で1000万円の給与所得なんだから、1人500万が平均ですという事実も揺るぎのない事実であり、統計情報であったり景気のバロメータとしての平均値は大変重要な意味を持ちます。
平均値に潜む罠
平均値の穴、特に収入の平均値には大きな穴があります。
収入は極端に言えば最低は0円です。(マイナスは借金なので収入という意味では除外します。給与所得0円が最低です。)
しかし、収入の最高、上限値はありません。
もしかしたら給与所得で10億円(役員報酬ではなく給与として得た報酬として)という人がいてもおかしくはありません。最低収入0円は固定なのに最高収入に上限はありません。
最低はラインがありますが、最高にラインがありません。
なので、景気が良いと収入が増える人は増えますので、最高ラインはどんどん上がっていき、平均値は当然のごとく上がります。
しかし、大多数は景気が良いからといってすぐに給与に反映するものではありませんのでおそらく中央値はそんなに変わらないのです。
総和を慣らしたものが平均なので、最高に上限が無い場合は、中央値と平均値のかい離が大きくなるのです。
乖離が小さいもので言えばテストの点数です。
テストの点数というのは、最低0点から満点100点など、下限と上限があるものです。
なので、その中の平均と、中央値はあまり乖離しないケースが多いです。(極端な結果、0点と100点しかいないなどの場合平均値と中央値が大きくずれることがあります。)
国内の経済状態を推し量るうえでは、平均値は重要な指標ですがそれはあくまで現在の経済状態を測る指標でしかなく、自分たちが自身の年収の位置づけ(自分は『普通・真ん中』といわれる人たちの収入より多いのか少ないのか)を見る際には正しい数字ではありません。
平均値を100万ほど下回っているからと落胆する必要はありません。
年収については中央値が『普通・一般』に近く、実態に近いので、中央値と比べてどのくらい差があるのか、そういう視点で見てみることをお勧めいたします。